伝え方より先に見直したいこと

2026.07.27
会議室 伝え方

職場でコミュニケーションの行き違いが起きると、
「もっと分かりやすく伝えた方がよい」
「言い方を工夫した方がよい」
という話になることがあります。

もちろん、伝え方を見直すことは大切です。
ただ、現場で起きていることを丁寧に見ていくと、問題は「伝え方」だけではないことも少なくありません。

同じ言葉を聞いても、相手によって受け取り方は異なります。
それは、立場や経験、持っている情報、仕事上の役割、今置かれている状況が違うからです。

たとえば、上司が「早めにお願いします」と伝えたとします。
上司は「今日中」を想定していても、部下は「今週中」と受け取るかもしれません。
どちらかが不誠実なのではなく、言葉の前提が共有されていなかっただけ、ということがあります。

こうしたとき、
「もっときちんと伝えるべきだった」
「普通は分かるはずだ」
と個人の問題にしてしまうと、同じ行き違いが繰り返されます。

必要なのは、伝え方を責めることではなく、
それぞれに何が見えていたのか
を確認することです。


「伝えた」と「伝わった」の間にあるもの

伝える側は、自分が知っている情報を前提に話します。
一方、受け取る側は、自分が知っている情報の中で意味を理解します。
そのため、同じ言葉を使っていても、頭の中に描いている内容が一致しているとは限りません。

職場では、忙しさから確認の時間が省かれやすくなります。
「そこまで説明しなくても分かるだろう」
「聞き返すと、理解していないと思われそう」
こうした遠慮や思い込みも、認識のズレを広げます。

だからこそ、

  • いつまでを想定しているか
  • どこまでできれば完了なのか
  • 相手はどのように理解しているか

を、短い言葉でも確認することが重要です。

確認は、相手を疑う行為ではありません。
一緒に仕事を進めるために、見えている景色を合わせる行為です。


個人の問題として終わらせない

人と組織の課題を考えるとき、私はまず、
「誰が悪いか」
ではなく、
「何が起きているのか」
を整理します。

伝わらない背景には、個人の話し方だけでなく、

  • 役割の曖昧さ
  • 情報共有の不足
  • 確認しにくい人間関係
  • 忙しさ
  • 上下関係
  • 相談しても変わらないという諦め

など、組織側の要因が重なっていることがあります。

表面に見えている言動だけで判断すると、
「話さない部下」
「指示が曖昧な上司」
「コミュニケーションが苦手な人」
という個人評価で終わってしまいます。

しかし、外部から状況を整理すると、個人の問題に見えていたことが、組織の仕組みや関係性の問題として見えてくることがあります。

ここに、「見立て」の必要性があります。


面談や1on1でも同じことが起きる

1on1や面談でも、質問の仕方だけを工夫すれば、本音が出るわけではありません。
「最近どうですか」
「困っていることはありませんか」
と聞いても、相手が

  • 何を話してよいか分からない
  • 話した内容が評価に影響しそう
  • 話しても状況は変わらない
  • どこまで話してよいのか判断できない

と感じていれば、深い対話にはなりにくいでしょう。

大切なのは、質問の技術だけではなく、
その場がどのように受け取られているかを考えること
です。
面談する側が「話しやすい場をつくった」と思っていても、相手も同じように感じているとは限りません。

ここでも、自分の見方だけで判断せず、相手には何が見えているのかを考える必要があります。


組織として考えたいこと

コミュニケーションの行き違いが起きたとき、個人の努力だけに任せるのではなく、組織として次の点を確認することが大切です。

  • 指示や役割は明確になっているか
  • 確認や質問をしやすい雰囲気があるか
  • 必要な情報が共有されているか
  • 面談が報告や評価だけの場になっていないか
  • 管理職だけに対話の負担が集中していないか

伝え方を整えることは必要です。
しかし、その前に、
なぜ伝わりにくい状態が生まれているのか
を考えることで、対策は大きく変わります。

人と組織の問題は、ひとつの言動だけで判断できるものではありません。
個人の声と組織の状況を行き来しながら、背景を整理することが必要です。


伝え方の前に、見えている景色を確かめる

「どう伝えるか」を工夫する前に、
「自分と相手は、同じものを見ているだろうか」
と立ち止まってみる。
それだけでも、対話の質は変わります。

伝えること。
確認すること。
受け取り方を確かめること。
それらを個人の努力だけにせず、組織の仕組みとして支えること。

それが、働きやすさや人材育成、離職防止にもつながっていくと考えています。


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