話したのに伝わらない」が起こる理由

2026.08.04
話したのに伝わらない」が起こる理由

「ちゃんと伝えたはずなのに。」
職場では、そんな場面に出会うことがあります。

説明したつもり。
分かってもらえたと思っていた。
それでも相手の行動は変わらない。
そんなとき、私たちは「伝え方が悪かったのかもしれない」と考えがちです。

もちろん、伝え方を工夫することは大切です。
けれど、私はその前に立ち止まって考えたいことがあります。

もしかすると、「伝わらない」のではなく、お互いに見えている景色が違うのかもしれません。


「伝えた」と「伝わった」は同じではない

私たちは普段、自分が見えている景色を前提に話をしています。
そのため、「ここまで説明すれば分かるだろう」と思って伝えます。

しかし、相手は違う経験を積み、違う役割を担い、違う情報を持っています。
その違いがある以上、同じ言葉でも受け取り方は変わります。

話したことと、相手に伝わったことは、必ずしも同じではありません。
だからこそ、「伝わらない」という出来事は、誰か一人の伝え方だけの問題とは言えないのです。


人は、それぞれ違う景色を見ている

例えば、管理職は
「自主性を大切にしたい」
という思いで見守っているかもしれません。

一方で、部下は、
「放任されている」
と感じているかもしれません。

また、部下は相談したつもりでも、
上司は「報告だけだった」と受け取っていることもあります。

どちらかが間違っているという話ではありません。
それぞれの立場や経験から見えている景色が違うだけなのです。

その違いを知らないまま話し合えば、言葉だけが行き交い、お互いに「伝わらない」と感じてしまいます。


「伝え方」の前に、「見立て」がある

私は企業や保育現場でご相談を受ける際、「誰が悪いのか」を探すことはほとんどありません。

まず考えるのは、
「この人には、何が見えているのだろう。」
ということです。

管理職には管理職の景色があります。

現場には現場の景色があります。

経験の浅い職員には、その人なりの景色があります。

それぞれが見ている景色を知ることで、「伝え方」を工夫する前に、なぜそのやり取りが生まれたのかが見えてくることがあります。


対話は、景色を重ね合わせる時間

対話とは、自分の考えを伝える時間であると同時に、相手が見ている景色を知る時間でもあります。

「伝えること」よりも、
「理解しようとすること」。

その積み重ねが、信頼関係を育て、人と組織の関係を少しずつ変えていきます。
言葉だけを変えても、景色が変わらなければ、同じことは繰り返されます。

だからこそ私は、
相手には何が見えているのか。
その問いを持ち続けたいと思っています。


「話したのに伝わらない。」

その背景には、言葉の問題だけではなく、立場や経験、役割、関係性など、さまざまな要素が重なっているのかもしれません。

伝え方を工夫することも大切です。
でも、その前に、「相手にはどんな景色が見えているのだろう」と立ち止まって考えてみる。

そこから対話は変わり始めます。


※「人と組織の見立て」では、企業・保育・個人相談を横断しながら、人と組織で起きる出来事を、外部専門職の視点から考えていきます。

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